
伊勢﨑晃一朗展 成る
東京:2020.01.23(Thu)~03.30(Mon)
新型コロナウィルス感染拡大防止のため、当面の間臨時休館いたします。
最新の情報は当ページにてご案内します。
LIXILギャラリーでは2020年1月23日(木)~2020年3月30日(月)の期間、「伊勢﨑晃一朗展-成る-」を開催します。
伊勢﨑晃一朗氏は備前焼の窯元に生まれ、美術大学で木彫刻を学んだ後、ニューヨーク在住の陶芸家ジェフ・シャビロ氏に師事。その後備前に戻り、独自の造形による茶道具、うつわ、花器などを制作しています。パラミタ陶芸大賞選抜(2011年)、第15回福武文化奨励賞受賞(2014年)、昨年2019年には「The備前 ―土と炎から生まれる造形美―」(東京国立近代美術館工芸館他巡回)に出品。伝統と現代性を体現した備前焼の若き担い手の一人として注目されています。本展では、「孕(よう)」と名づけられた作品シリーズから約6点を展示します。
「伊勢﨑晃一朗展 成る」に寄せて
これまで、備前焼は土が命といわれてきた。備前焼の土は、六古窯の中で最も細かい粒子の粘土で、急激な温度の変化に弱いため、時間をかけて徐々に焼成温度を上げてゆかねばならない。土は大きく山土と田土に分かれるが、なかでも田土はねっとりとした可塑性のある粘土のため、焼き上がりの土味は最高といわれている。備前焼の作家のすべてが最高といわれる粘土を使えるわけではないが、素材である土と向き合う作家の姿勢はいまも変わらない。備前焼を生業(なりわい)とする家に生まれた伊勢﨑晃一朗も、その一人である。
伊勢﨑は、「手にしている原土がどのように土中に在ったのかを知っている事は、その後の創作に強く影響を与えるように思う。(中略)大地の事、それが育まれた悠久の時間等を時折想像する行為の積み重ねは、自分に何かしら作用しています。」という。それは、土と真摯に向き合う伊勢﨑の作陶姿勢を伝える言葉である。
伊勢﨑は、東京造形大学彫刻科で木彫を学んだ。陶芸を意識し始めたのは大学4年の時。当時向き合っていた楠(くすのき)という素材を考えているうちに、「土ってなんだろう」と思ったのがきっかけだった。そこからやきものへの道が始まった。作品に強く惹かれて弟子入りしたジェフ・シャピロ(ニューヨーク在住の陶芸家)や現地の学生たちと、「なぜその手法でなければならないのか」などの表現方法について話し合っているうちに、「木を彫ることも、土を彫ることも、自然の素材に手を加えるということに変わりはない。だから、陶芸であっても表現できる」と思ったという。
ところで、彫刻の心棒には針金や木が使われるが、やきものの心棒は空白である。その空白部分にやきものの本質があると言ってもいいだろう。「かたち、質感、色合い。それらは相まって其のモノの存在感を醸す『要素』ではあるが、『目的』ではない。僕が最も心惹かれるのは、土で出来たモノが空間及び感情に作用し、土が持ち得る『多様な豊かさ』を実現させる事です。」この一文は、伊勢﨑が作陶する上での目的を示したものだが、ここでは、土で出来たモノが空間にいかに作用するかを語っている。
今展のサブタイトルにある「成る」とは、単に窯の中の焼成によって生じた歪んだカタチをいうのではなく、作品名の「孕(よう)」という言葉が示すように、なにかを孕(はら)むことを意味するが、それは「空気を孕む」とか、器の宿命である「虚(うつろ)」とか、決して一つではない。ここでは、心棒の空白部分に新たな生命を宿すことによって、膨らんでゆく「成る」カタチを表現しょうとしている。作家は、それをハプニング(出来事)と呼んでいるが、それは言葉を超えた空(くう)なる力と言い換えたらいいだろう。伊勢﨑の「孕」を眺めていると、目には見えない生命の鼓動が聞こえてくる。その鼓動こそ、縄文の古(いにしえ)より伝えられてきた、やきもの造りの心音ではないかと思う。
森 孝 一(美術評論家・日本陶磁協会常任理事)
- 「孕」 2019年 H260×W370×D240mm
会期 | 2020年1月23日(木)~3月30日(月) |
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休館日 | 水曜日、2月23日(日) |
開館時間 | 10:00~18:00 |
企画制作 | 株式会社LIXIL |
入場料 | 無料 |
作家略歴
1974 | 備前市生まれ |
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1996 | 東京造形大学彫刻科卒業 |
1998 | ジェフ・シャピロ(ニューヨーク州)に師事 |
2005 | 「第48回日本伝統工芸中国支部展」岡山放送賞 |
2008 | シンポジュウム“茶陶―造形と意匠にみる現在性”(ギャラリーヴォイス、多治見・岐阜) |
2009 | 第26回田部美術館大賞「茶の湯の造形展」奨励賞(2012、2016) |
2010 | 「第53回日本伝統工芸中国支部展」日本工芸会賞 |
「現代工芸への視点―茶事をめぐって」(東京国立近代美術館工芸館) | |
2011 | 「第54回日本伝統工芸中国支部展」日本工芸会中国支部長賞 |
第6回パラミタ陶芸大賞展(パラミタミュージアム、三重) | |
2012 | 第5回岡山県新進美術家育成「I氏賞」奨励賞 |
「第55回日本伝統工芸中国支部展」教育長賞 | |
2013 | 「第56回日本伝統工芸中国支部展」岡山県知事賞(2015) |
イタリア・ファエンツァにて展覧会および講演 | |
2014 | 第15回福武文化奨励賞 |
2016 | 「第59回日本伝統工芸中国支部展」島根県知事賞 |
「第67回岡山県美術展覧会」山陽新聞社賞(2019) | |
2019 | 「The 備前-土と炎から生まれる造形美-」(東京国立近代美術館工芸館・他巡回) |
「伊勢﨑晃一朗展 成る」(日本橋三越本店本館6階美術特選画廊、東京) |
- 2020年1月 会場風景
撮影:荻沼秀和 - 2020年1月 会場風景
撮影:荻沼秀和 - 2020年1月 会場風景
撮影:荻沼秀和 - 2020年1月 会場風景
撮影:荻沼秀和 - 2020年1月 会場風景
撮影:荻沼秀和