
住まいに欠かせない、生きるための空間「台所」。食物を扱うため、その土地の気候風土や文化とも密接に関わり、地域による独自性も高い。しかし近年では、働く場として合理的で機能重視な空間へと急速に変化し、伝統的な台所は世界的に消えつつある。本書では、世界と日本の台所事情をそれぞれ調査した2人の研究者をナビゲーターに、人々が求めてきた台所はどのような空間なのかを再考する。
宮崎玲子氏(建築家)は、世界の伝統的な台所を約半世紀にわたり調査。北緯40度を境にして、南北で「火」と「水」の使い方に特徴があることを明らかにした。1/10模型や直筆のイラストで各地域の特性を紹介する。須崎文代氏(神奈川大学工学部建築学科特別助教)は、日本の台所史を軸に、劇的に変化してきた日本の台所について、明治から昭和初期の家事教科書や家政書から改良への変遷を分析。さらに有名建築家による実践も紹介する。古今東西に広がる台所空間へ誘う一冊。
■目次
□フィギュアが語る世界の伝統的な台所 模型制作=宮崎玲子
──ドイツ/イタリア/ロシア/北極圏/ネパール/インド/中国/日本
□世界の台所を訪ねて 宮崎玲子
──スイス/デンマーク/ブルガリア/アメリカ/イタリア/フランス/ギリシャ/中国/マレーシア/台湾
□建築家らの実践 須崎文代
──エルンスト・マイ+マルガレーテ・シュッテ=リホツキー/ル・コルビュジエ+シャルロット・ペリアン/ミース・ファン・デル・ローエ/バックミンスター・フラー/ジョージ・ネルソン/ジョエ・コロンボ/ステファン・ヴェヴェルカ/堀田英二/吉田五十八/藤井厚二/菊竹清訓
□台所空間と身体の革新(イノベーション) 須崎文代
年表 近代台所関連史