
いま私たちが直面しているのは、超資本主義的な状況のなか都市や建築が崩壊していくさまであると、建築家・岸和郎は言う。本書では、近代社会が保持してきた価値観が揺らぐ現在、建築はいかに存在価値を持ちうるのかを考える。
ル・コルビュジエやミース・ファン・デル・ローエたちが確立したモダニズムは、どう継承され、受容されてきたのか。ツーリズムやエキゾティシズムという近代を特徴づけてきた概念は現在どう展開しているのか。
また巨匠と踵を接したアイリーン・グレイ、リリー・ライヒの仕事やインテリア・デザインと建築の関係について。語りにくかったファシズム下のモダニズム建築。保存は絶対的な善なのか。丹下健三とは? 建築写真とは? 岸独自の視点から、現在の建築状況がくっきりと見えてくる。
聞き手=小巻哲
■目次
はじめに──揺れ動くモダニズムのなかで
第1講 爛熟の後に来るもの
第2講 アメリカにおけるモダニズムの受容[1]
第3講 アメリカにおけるモダニズムの受容[2]
第4講 読み替えられるモダニズム
第5講 失速したモダニストたち
第6講 日本における「日本」の受容
第7講 「3mの良心」を持つこと
第8講 「ケンゾー・タンゲ」という存在
第9講 建築を保存すること
第10講 空港~どこでもない場所
第11講 インテリア・デザインの居場所
第12講 建築写真の行方
第13講 アイリーン・グレイとリリー・ライヒに想うこと
第14講 消費されるモダニズム
第15講 出口なき道の行方
年表「岸和郎の脳内アーキテクト/デザイナー」
インタビューを終えて 小巻哲